
夏目漱石の名作「坊っちゃん」にも出てくる「マッチ箱のような列車」。
その列車を再現した観光列車、その名も「坊っちゃん列車」が、松山の市内を走っています。
松山市駅前で待っていると、蒸気機関車が客車1両(ダイヤによっては2両編成になることもあります)を牽引した「坊っちゃん列車」が到着しました。煙突からは煙をもくもくと吐いていますので、一見すると普通の蒸気機関車の様に見えますが、実は軽油で走るディーゼル機関車なのです。これなら、煙害の心配はありませんね。
この列車はこの松山市駅終点(一部の便は、JR松山駅前を経て古町駅が終点)なので、乗客を降ろすと、方向転換作業が始まりました。
まずは客車と機関車を切り離します。切り離した客車は、車掌さんと係員が手で押して移動しています。はるか昔には、客車を手で押して動かす「人車軌道」なる乗り物がありましたが、その原理みたいですね。
それでは、機関車はどうするのでしょうか?一般的には、起終点の駅にはターンテーブル(転車台)があって、そこで機関車の方向を転換するのですが、ここ松山市駅にはその様な設備はありません。果たして、どのようにして方向転換をするのでしょうか?
すると、機関車の前方を少しだけひょいと持ち上げ、後部台車を軸にして回転させたのです!これは見事な工夫ですね。

方向転換を無事終えた機関車は、車掌が転線させた客車と再度連結し、バックで乗り場へと入ってきました。これであとは乗客を乗せるだけですね。
この日の機関車のナンバーは「14」。すなわち「伊予鉄(いよてつ)」だから「14(いよ)」なのです。この列車に乗車するためには、大人800円の料金が必要。(「市内電車一日乗車券」では乗れませんのでご注意ください)他には、伊予鉄の第一号機関車を模した「1号機」が走っています。
その昔、実際の蒸気機関車が鳴らした様な汽笛を響かせて、「坊っちゃん列車」は松山市駅を後にしました。「坊っちゃん列車」の歴史は古く、1887年(明治10年)、四国初の鉄道として松山~三津間が開通したことに始まります。その時代に伊予鉄の線路を走っていて、夏目漱石の「坊っちゃん」にも登場した「マッチ箱のような列車」を、2001年(平成13年)に再現したのが「坊っちゃん列車」なのです。

松山市駅を出ると、「坊っちゃん列車」は「大街道」電停のみに停車する「急行運転」で、道後温泉へと向かいます。この画像は、その「大街道」にて撮影した「坊っちゃん列車」です。乗客を乗せるとすぐに発車しました。
客車の車内は木目調で、明治の昔を彷彿とさせてくれる感じでした。現在は安全や防火の関係から、完全な「木造車」というものは認められていないので、この車両も鉄鋼製に木目調のパネルを貼り付けたような感じです。「マッチ箱のような列車」というだけあって、車内も客車自体もミニサイズでした。
「急行運転」とはいうものの、のんびりと市内を走って約20分で終着駅・道後温泉に到着しました。ここでは乗客を降ろすと、その先の折り返し線で方向転換します。
そして、客車を従えて、駅前広場前に設けられた「展示線」へと停車する。ここで折り返しまで、写真撮影などの観光用に待機するのです。
ここで面白い光景を見かけました!
停車していた「坊っちゃん列車」の脇に、石油屋さんの軽トラックが横付けされました。何をするのかな、と思って眺めていると、石油屋のお兄さんは機関車のカバーを開け、そこへホースを差し込みました。そうです!この「坊っちゃん列車」の機関車は軽油で走るディーゼル機関車なので、燃料の軽油を補給していたのです。これは、めったに見られない光景でした。
明治チックな道後温泉駅舎と「坊っちゃん列車」を絡めて撮影してみました。どことなくいい絵になりますね。
松山市内には、「坊っちゃん列車」が他にも見られるところがあります。
まずは伊予鉄高浜線「梅津寺」駅にある梅津寺公園。ここには、伊予鉄1号機関車とレプリカの客車が保存されており、機関車は「鉄道記念物」にも指定されています。
また「梅津寺」駅といえば、1991年(平成3年)のTVドラマ「東京ラブストーリー」で、鈴木保奈美扮するヒロイン・赤名リカがホームにハンカチをくくりつけて旅立った駅です。
そのため、同駅のホームにはそれにあやかってハンカチをくくりつける観光客が今でも多くなっています。
松山市駅近くの「子規堂」には「坊っちゃん列車」の客車が展示保存されています。これは明治時代当時の客車の実物で3等車(並等車)の区別を表す赤帯が締められているのが特徴です。
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その近くの伊予鉄本社前には1号機関車の原寸大のレプリカが飾られています。本年(2016年)12月には、ここに「坊っちゃん列車ミュージアム」がオープンします。今から楽しみですね!
「坊っちゃん列車」の時刻等については、伊予鉄道ホームページをご参照ください。